研究内容

プロジェクト1(AI Nutrition)

『AI Nutrition』のススメ

 前述した様に、最近の私達の研究成果から、生体は血液中のアミノ酸のパターン(血中アミノ酸プロファイル)を認識して、物質代謝を調節していることが明らかになりつつあります。また、いろいろなアミノ酸組成の食餌を給餌した表現型の結果から、血中アミノ酸プロファイルの変化が低タンパク食給餌で誘導されるいろいろな表現型発現(疾患発症)の原因である可能性を示しました。この結果は逆に言えば、悪化した血中アミノ酸プロファイルを健康な血中アミノ酸プロファイルに改善してあげれば、様々な生活習慣病が予防、治療できる可能性を示しています。

 例えば、高脂肪食給餌したラットでは脂肪肝や骨格筋への脂肪交雑や高コレステロール血症などを発症することが知られています。驚いたことに高脂肪食を給餌したラットの血中アミノ酸濃度を測定したところ、食餌中のアミノ酸組成は変化していないにも関わらず血中のアミノ酸プロファイルは変化していました。さらに食餌中のアミノ酸組成を変化させて、血中アミノ酸プロファイルを改善したところ、高脂肪食給餌で誘導された脂肪肝や高コレステロール血症、骨格筋への脂肪交雑などが改善することがわかりました(Nishi et al. Curr. Dev. Nutri. 2024)。この結果は、高脂肪食摂取によって誘導されるメタボリックシンドロームであっても食餌中のアミノ酸組成を工夫することで改善や予防、治療が可能であることを示しています。

 そこで、私たちは、疾患発症と関連のある血中アミノ酸プロファイルをヒトにおいても同定して、その血中アミノ酸プロファイルを再現することで前臨床モデル動物を作成するとともに、血中アミノ酸プロファイルの改善を標的とした新たな食による疾患発症予防法『AI Nutrition』の推進を提唱しています。

私たちは本プロジェクトに関する特許も多数取得しています(特許)。
血中アミノ酸プロファイル改変を標的にした個別栄養による疾患予防法の確立
研究内容:目次 プロジェクト1(異所性脂肪)  戻る     次へ  プロジェクト1(臓器間連携)