研究内容
プロジェクト1
食餌中のアミノ酸成分が体代謝に及ぼす影響を解明する
タンパク質は、生体の構造や機能を維持する上で不可欠な栄養素です。筋肉、皮膚、内臓、酵素、ホルモン、免疫物質など、体内のさまざまな組織や物質はタンパク質から構成されています。体内で合成できない必須アミノ酸を摂取するためにも、食事から十分な量のタンパク質を摂る必要があります。特に成長期や運動時、病気の回復期には需要が高まります。摂取するタンパク質が不足すると、筋力低下や免疫力の低下などの健康障害を引き起こす可能性があるため、バランスの取れた食生活の中で、質・量ともに適切なタンパク質摂取が重要であると考えられています。
最近、私たちの研究室では、成長期のラットにタンパク質量を制限した低タンパク食を与えることで、成長遅滞(Nishi et al. Cells 2024)に加え、肝臓(Nishi et al. Sci. Rep. 2018)および骨格筋(Goda et al. J. Biol. Chem. 2021)への脂肪蓄積、インスリン感受性の上昇(Toyoshima et al. Endocrin. J. 2014)、糖新生活性の低下(Toyoshima et al. J.Mol.Endocrinol. 2010)など、さまざまな表現型が誘導されることを明らかにしてきました。現在は、これら多様な表現型がどのような分子メカニズムによって引き起こされるのかについて、精力的に研究を進めています。

低タンパク食を給餌したラットで誘導される肝臓・骨格筋への脂肪蓄積、成長遅滞を制御しているアミノ酸を特定するために、特定の1つのアミノ酸のみを制限した飼料を作成し、成長期のラットに給餌しました。その結果、アルギニンまたはスレオニンを単独で制限した食餌で脂肪肝が誘導されますが、骨格筋には脂肪が蓄積しません。一方で、リジンのみを制限した低リジン食では骨格筋には脂肪が蓄積しますが、肝臓には脂肪が蓄積しません。さらに必須アミノ酸を一つでも制限した食餌では成長遅滞が誘導されました。この様に低タンパク食を給餌したラットでは様々な表現型が誘導されますが、それぞれの表現型には異なるアミノ酸が関与している可能性が考えられました。

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