研究内容

プロジェクト1

食餌中のアミノ酸成分が体代謝に及ぼす影響を解明する

 タンパク質は、生体の構造や機能を維持する上で不可欠な栄養素です。筋肉、皮膚、内臓、酵素、ホルモン、免疫物質など、体内のさまざまな組織や物質はタンパク質から構成されています。体内で合成できない必須アミノ酸を摂取するためにも、食事から十分な量のタンパク質を摂る必要があります。特に成長期や運動時、病気の回復期には需要が高まります。摂取するタンパク質が不足すると、筋力低下や免疫力の低下などの健康障害を引き起こす可能性があるため、バランスの取れた食生活の中で、質・量ともに適切なタンパク質摂取が重要であると考えられています。

 最近、私たちの研究室では、成長期のラットにおいて食餌中のタンパク質量を制限した低タンパク食を与えることで、成長遅滞に加え、肝臓および骨格筋への脂肪蓄積、インスリン感受性の上昇、糖新生活性の低下など、さまざまな表現型が誘導されることを明らかにしてきました。現在は、これら多様な表現型がどのような分子メカニズムによって引き起こされるのかについて、精力的に研究を進めています。その過程で、成長遅滞や肝臓と骨格筋への脂肪蓄積には、それぞれ異なるアミノ酸が関与していることが明らかになりつつあります。

 低タンパク食を給餌したラットでは、肝臓に脂肪が蓄積し、脂肪肝が誘導されることが明らかになっています。そこで、脂肪肝の形成に関与するアミノ酸を特定するために、特定の1つのアミノ酸のみを制限した飼料を作成し、成長期のラットに給餌しました。その結果、アルギニンまたはスレオニンを単独で制限した食餌でも脂肪肝が誘導されることが確認されました。一方で、全アミノ酸を制限した低アミノ酸食にアルギニンあるいはスレオニンを単独で補っても、脂肪肝の抑制には至りませんでした。このことから、肝臓の脂肪蓄積は食餌中のアルギニンやスレオニンの量だけで決まるわけではないことが示唆されました。現在は、食餌中のアミノ酸量に加え、血中アミノ酸濃度のバランスが脂肪肝形成に及ぼす影響について、さらに研究を進めています。

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