研究内容

プロジェクト3(4)

 先にも述べたように、IGFは増殖・分化誘導活性などが強いのに対して、インスリンは代謝性活性が強いというように、IGFとインスリンの生理的意義は大きく異なるにもかかわらず、これまで、インスリンレセプターとIGF-Iレセプターの細胞内シグナル伝達機構の大きな差違が認められていません。そこで、私たちの研究グループでは、それぞれのレセプターと相互作用することによって、IGFやインスリンの特徴的な生理活性を発現する新規分子、あるいはこれらのホルモンの活性を修飾する新規分子を検索しています (表6)。 また、レセプターキナーゼのもうひとつの重要な基質であるShcの新しい機能も含め、IGFやインスリンの新しいシグナル伝達経路やシその修飾機構を総合的に明らかにしたいと考えています。

図を別windowで開く
表6 インスリンレセプター/IGF-Jレセプターと相互作用するタンパク質とその機能

 私たちは、IRSAPの同定と同様な手法で、インスリンレセプターあるいはIGF-Iレセプターに相互作用しているタンパク質を検索している。この表に、これまでに報告のあるタンパク質とともに列挙したが、これらのタンパク質は、レセプターチロシンキナーゼ活性の制御、レセプターキナーゼ基質の選択、レセプターの細胞内安定性の調節、レセプターからの新しいシグナル伝達などに重要な役割を果たしていることがわかってきた。また、インスリンレセプター、IGF-Iレセプターにそれぞれに特異的に相互作用するタンパク質は、それぞれのレセプターの特異性を発揮するのに必要である可能性が考えられえいる。また、レセプターとこれらのタンパク質の相互作用は、経時的に変動しており、特に、IGF-Iレセプターと長期に相互作用するタンパク質は、IGFの長期作用の発現になんらかの機能を果たしていると考えている。


 ここで述べてきたようなアプローチで、IGF/インスリンの新しいシグナル修飾機構が明らかになれば、これまで困難だった成長遅滞や糖尿病などの疾患の特異的な治療法の開発が可能になるばかりでなく、この基礎研究の成果が、動物の生殖・発生・発達・成長・老化の制御、臓器の再生、生体状態をモニターするアッセイ法の開発、新しい疾患モデル動物の作成などの応用研究にも寄与できると期待しています。

研究内容:目次 プロジェクト3(3)  戻る     次へ  プロジェクト4(1)