研究内容

プロジェクト2(1)

インスリン抵抗性の発生メカニズムを明らかにする

 糖尿病は、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病;IDDM)とII型糖尿病(インスリン非依存性糖尿病;;NIDDM)に大別され、共に遺伝素因を背景にして引き起こされると考えられています。これらの原因遺伝子に関する研究は鋭意進められています。一方、II型糖尿病においては、同時に環境因子の関与も大きいことが明らかとなっています。一般に、必要なホルモンの細胞内シグナルが抑制されると、ホルモン応答が起こらなくなる「ホルモン抵抗性」となり、病気に陥ります。日本の糖尿病患者の大部分をしめるII型糖尿病は、「インスリン抵抗性」が大きな発症要因と考えられています。すなわち、II型糖尿病は、遺伝子素因と共に肥満・過食・運動不足・ストレス・加齢などの環境因子により引き起こされる「インスリン抵抗性」と、遺伝素因と血中インスリン濃度の異常かつ継続的な上昇により起こる「インスリン分泌不全」が相まって、インスリン生理活性が不足し、結果として高血糖が引き起こされる状態と定義されています。しかし、「インスリン抵抗性」発生の分子機構の詳細は未だに十分明らかにされておらず、これを治療するための薬剤の開発が切望されています。一方、最近になり、IGF抵抗性に陥るために、成長遅滞や代謝異常が引き起こされる例も、数多く報告されています。このようなインスリン抵抗性やIGF抵抗性の発生原因として、いろいろな生体分子の関与が示されてきています (表5)。 現在、これらの細胞外因子(発生原因因子)により、どのような機構を介して、抵抗性が発生するのかについての研究が鋭意進められています。

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表5 インスリン抵抗性、IGF抵抗性の例と発生原因の候補分子

いろいろな生理状態において、インスリン抵抗性、あるいはIGF抵抗性が起こり、糖尿病、あるいは成長遅滞が起こる。これらの抵抗性は、ここにあげた因子などを介してインスリンやIGFの細胞内シグナルが抑制されるために引き起こされると考えられている。

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