研究内容

プロジェクト1(4)

 IGFは、一見多種多様な生理活性を有していますが、組織・細胞のおかれている状態により、発現すべき生理活性が決定される必要があると考えられます。すなわち、まず、組織においては生体の発達状態・生理状態に応答して、細胞においては他のホルモン・成長因子・細胞外マトリクスなどの細胞外因子によって、IGF標的細胞の増殖を誘導・分化を誘導・細胞死を抑制・細胞機能を維持するなど、細胞の進むべき方向が決定されます。続いて、種々の状態・細胞外因子により、IGF生産、IGFBP生産、IGFとIGFBPの結合状態、IGFレセプター発現、IGFの細胞シグナル伝達などの各段階で複雑に制御されたIGFの生理活性の強度に応じて、決定された方向にIGFのシグナルが伝えられ、生理作用を発現します。このような複雑かつ緻密な機構を介して合目的的なIGFの活性発現が可能になっているのです。

 私たちは、生体の発達・生理状態あるいはホルモンなどのシグナルによって、どのようにIGFの生理活性の方向が決定され、同時にIGFのシグナル強度が調節されるのかを明らかにし、IGFが正常な発達・成長・代謝制御を可能としている分子機構を解明していきたいと考えています (図10)。 また、それぞれの標的細胞にIGFの特定の生理活性を発現させるような因子の同定を進め、IGFの臨床応用の可能性を広げたいと思っています。このように、組織・時期特異的なIGF活性の制御が可能となれば、特定の組織の増殖・分化を誘導するような再生技術にも貢献できると期待しています。

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図10 IGFシグナルを増強する生理的意義

 先にも述べたように、IGFは、細胞増殖誘導、細胞分化誘導、細胞死抑制、細胞機能維持など、多種多様な生理活性を広範な細胞で発現することが明らかにされている。この際、生体にとっては、どの時期に、どの組織で、どの生理活性を発現するかが、合目的的に制御される必要がある。生体の発達状態・生理状態に応答して、あるいはこれらがホルモン・成長因子・サイトカイン・細胞外マトリクスをはじめとした細胞外因子を介して、特異的な標的細胞で、IGFの特定の細胞内シグナルを増強(あるいは抑制)し、その結果、多種多様な生理活性の中で特定の活性が発現することが可能となる。したがって、どのような因子がどのような機構を介して、IGFシグナルを調節するかを明らかにすることが、重要な研究テーマとなる。

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