研究背景

はじめに(2)

 標的細胞における細胞内情報伝達機構は、

  1.  小さな情報を大きな細胞応答に変える「情報の増強」
  2.  ひとつの情報を様々な場所に伝える「情報の同期」
  3.  いくつもの情報を合流させる「情報の統合」
を可能にしており、この意味で巨大な細胞社会を統御する精巧な仕組みということができます (図2)。 特に、外界の環境変化や体内の状態のモニター情報を伝達する神経系・内分泌系・免疫系の情報伝達因子のシグナルクロストーク、すなわち「情報の統合」は、恒常性の維持に必須であることは言うまでもありません。

 私たちの研究グループは、特に生命の維持に不可欠なペプチドホルモンであるインスリン様成長因子(IGF)とインスリンの生理活性の調節機構に注目し、この機構を細胞内シグナルのクロストークの観点から明らかにすることを目的に研究を進めています。

 このホームページでは、IGFやインスリンがどのようなホルモン・成長因子なのか、そしてどのような細胞内情報伝達機構を介して生理作用を発現するかを概説し、続いて私たちの研究背景と研究内容をご紹介します。更に、研究室のメンバーと担当する研究テーマ、これまでの学会発表と報文・総説などの情報を載せてありますので、私たちが進めている研究教育活動を理解していただくために、参考にしていただければ幸いです。

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図2 細胞内情報伝達機構の意義

 細胞内では、細胞外からきたホルモン・成長因子・サイトカインなどのリガンドのシグナルを増幅し、最終的に酵素反応などを介して、細胞応答を引き起こす。一方、細胞外因子は同時に複数のシグナル伝達機構を活性化し、広範な生理活性を発現する。また、他の因子のシグナルとクロストークをしたり、下流のシグナル分子や上流のシグナルを調節する。このような複雑な機構により、細胞外因子の生理活性は合目的的に制御されている。

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