研究背景

はじめに(1)

生命を維持するための精巧な仕組み

 動物は、外界の環境や体内の状態に応答して生体を制御するホメオスタシス、恒常性維持の仕組みによって生命を維持しています。この際、200種類を越える様々な細胞、そして様々な細胞の集合体である臓器・器官は、軌を一にしてその機能を調節されなければなりません。これを可能にするために、生体は数え切れないほどの情報伝達機構を備えていることが、最近明らかになってきています。

情報伝達機構は、細胞を中心に考えると、体内外の変化を細胞へ伝える神経系・内分泌系・免疫系といった「細胞外情報伝達機構」と、この機構の情報伝達因子である神経伝達因子・ホルモン・サイトカインなどの情報を細胞内に伝え応答を引き起こす「細胞内情報伝達機構」の2段階に大きく分けることできます (図1)。情報伝達因子の性質によって細胞内情報伝達の方法が異なり、主に、親水性の分子は標的細胞の細胞膜に存在する受容体を介して短時間に作用を発現、疎水性の分子は細胞内に存在する受容体に結合し核へ移行、転写を制御することによって長時間かかって作用を発現します。

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図1 細胞外情報伝達機構と細胞内情報伝達機構が恒常性維持を可能にするメカニズム

生体は、体内外の変化を、神経系・内分泌系・免疫系などの細胞外情報伝達機構を介して標的細胞に伝えるが、これらの情報伝達系はお互いに影響し、調節しあっている。それぞれの系に特徴的な情報伝達因子は、標的細胞の細胞内情報伝達機構を介して、酵素などの標的分子の転写・翻訳・活性などを制御し、細胞応答を引き起こす。この細胞応答によって、生体は体内外の変化に適応、恒常性を維持することによって生命を長らえている。

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